親知らずが生え始めました。
東京に来て半年、相変わらず一人ですが、右上の奥歯の先には新たな生命がうごめいています。
最近鏡を見て、静かに、でも確実に老いを感じるなかで「自分はまだ生きている、成長しているんだ」と少し嬉しい気持ちになりました。
思えば7年半ほど前、それまで生まれ育った広島の街を出て、大阪で人生初めての一人暮らしを始めたときにも、左上の奥歯の先に親知らずが生えました。
親知らずとは不思議なもので、親が知れない環境に行ったら生えてくるみたいです。
最近、今まで怖くて調べてなかったのですが、母親の病気について調べてみました。すると5年後の生存率は50%らしく、思っていた以上に残された時間は少ないかもしれないことを知りました。
そう思うと、この右上の親知らずが、親不孝な子どもに帰りを知らせるタイマーのような気がしてきて、気付いたら広島へ戻る転職に申し込んでいました。
5年後に母親のいない世界でどれだけ出世していても、どれだけお金を稼げていても、僕はきっと後悔していると思います。
都落ちでも何でもいいので、今はただ、帰りのチケットが僕の分もあるのか、確認したいと思っています。
もし帰れたら、2本の親知らずも使っておかあさんの料理をいっぱい食べたいと思っています。